建設現場事故ニュース

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建設現場労災事故が増加 昨年死傷者数前年比23%増 ベテラン減背景に

 県内の建設現場で労災事故が増加している。長崎労働局のまとめでは、昨年の死傷者数は前年比23%増の215人(死者3人)で、過去5年間で最も多い。今年も5月末現在で、死傷者数は前年の同期に比べて9人増え、死者数はすでに昨年1年間より多い4人になった。今月1日からは全国安全週間が始まり、同局は「憂慮すべき事態。より現場の実態に即した安全指導に力を入れたい」と危機感を強めている。(池園昌隆)

 長崎労働局のまとめによると、昨年の県内の労働災害による死傷者数は1458人で、前年比で91人増加した。死者数は前年比6人減の11人だった。一方、今年5月末時点の全体の死傷者数は454人と前年比で48人減少しているものの、うち建設業では前年比9人増の82人と、昨年を上回るペースだ。

 事故の要因別でみると、昨年、建設現場の事故の原因として最も多かったのは、「屋根や足場からの転落」(32%)で、「重機などへの挟まれ、巻き込まれ」、「重機、用具での切れ・こすれ」(12%)などが続いた。4月中旬には、島原市の養鶏場で屋根の修理作業をしていた建設作業員の男性(当時76歳)が7メートル下の地面に転落し、死亡する事故が起きた。同局は転落防止のための柵や手すり、命綱などの設備がなかったことが要因とみており、建設現場での労災事故増加については「景気の回復で工事量が増加する一方、現場では、熟練労働者が減って、経験の浅い労働者の割合が増えている。現場の人材不足に加え、安全管理者の数も不足するほか、事業者の安全衛生に対する認識も十分でないことなどから、現場の安全管理に支障が出ている」と分析する。

 多発する労災事故を受け、同局と長崎労働基準監督署は6月、長崎市尾上町の県庁舎行政棟新築工事現場で現場の重機の転倒対策や、有資格者の配置状況、作業計画などをチェックする緊急安全パトロールを実施。その後、国や県などの公共工事発注機関や民間の建設関係団体などに労災防止対策の推進を求める要請を行った。また、今月1~7日は全国安全週間となることから、同局は安全意識の向上を図る安全大会や、安全パトロールによる一斉点検を行うなど、県下一斉の対策を進めている。

 同局健康安全課の池田康広課長は「職場内の全員で危険を洗い出すため、積極的に情報共有を図ってほしい」と話している。

 「ヘルメット良いか、安全帯良いか、足もと良いか、服装良いか、本日もご安全に!」

 6月20日朝、長崎市田中町で行われている、地すべりで崩落した道路の復旧工事現場で、作業開始前の朝礼が行われた。落下防止用のワイヤの安全点検や、工事車両の通行の安全確保、熱中症への注意などについて声を出し、最後に作業員全員が装備の指さし呼称を行い、現場に繰り出した。現場事務所の坂本国昭所長(53)は「危険な場所は1人の目より多くの人の目で見た方がみつけやすい。『みんなで見て、声掛けをしよう』と呼びかけている」と現場でのコミュニケーションの重要性を強調する。

 工事を担当する黒瀬建設(長崎市)は、工事ごとに年間、月間の安全衛生管理計画を作成していることや、徹底した安全教育などを評価され、2012年に長崎労働局長から安全衛生表彰を受けた。坂本所長は「人手不足や若い作業員の技術不足など、労災事故の発生のリスクは様々あるが、防止の特効薬はない。工事内容に応じた安全対策を全作業員に繰り返し指導することで意識づけをしていくしかない」と力を込める。

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